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    トキソプラズマ症 【toxoplasmosis】

    キーワード ネコ、妊娠、豚肉
    病原体 トキソプラズマ
    感染動物 ネコ


    [動物の症状] 無症状

    [ヒトの症状] 無症状、流産、水頭症

    [感染経路] 経口

    [敵を知る]
    ネコの糞便や完全に熱調理されていない肉の中に入っているトキソプラズマがヒトの口から入ると、トキソプラズマ症になることがあります。健康であれば症状が出ないかリンパ節(※1)が腫れたりする程度で済みますが、妊娠中や病気で抵抗力が落ちているヒトで重い症状が出ることがあります。欧米ではエイズ患者の30%近くがトキソプラズマによる急性脳炎で死亡しています。
    妊娠初期にトキソプラズマ症にかかってしまうと、赤ちゃんが亡くなってしまうことがあります。生きて産まれたとしても、目や神経などに影響が出ることがあって、成長してから気がつくこともあります。
    出産情報誌の氾濫で、ネコのトキソプラズマ症は奇形児の生まれる代表的病気と思われていますが、その発生率はそれほど高いものではありません。欧米ではネコの糞便のトキソプラズマからの感染よりもトキソプラズマに感染した生肉を食べることで感染する機会が多いといわれています。
    トキソプラズマの感染率は年齢が上がるにつれて、高くなり成人の約30%は既に感染した経験があるといわれています。過去に感染したヒトが妊娠しても問題はありません。妊娠中に初めて感染したときに原虫が胎児へうつる可能性があり、うつっても異常を示すのはさらに低いと報告されています。東京での1988年と1996年の妊娠適齢期のトキソプラズマ感染率の比較では、1996年の方が低くなっています。低いからよいと思われがちですが、全体的に感染率が低くなると、妊娠時に初感染する人が増えるので啓蒙はさらに必要でしょう。

    [病原体データ]
    トキソプラズマは原虫と呼ばれる小さな寄生虫で、200種類以上の哺乳類・鳥類に寄生します。ネコはトキソプラズマ症に感染している生肉や小動物を食べることで感染します。 ネコではほとんど無症状ですが、仔ネコに感染して重症化すると呼吸困難や視力障害、神経症状で死亡することがあります。
    感染源のトキソプラズマ原虫を排出するネコは感染後、1〜3週間の期間だけで、それもほとんどが仔ネコです。ネコの糞便に排出されるトキソプラズマ原虫は消毒薬に強く、屋外で1年以上も生存していたと報告があります。感染した食肉のトキソプラズマは、4℃〜6℃で2ヶ月生存し、マイナス20℃でも必ずしも死滅せず、胃液内でも生き残ります。ですから、十分な過熱の調理が大切になります。

    [症例]
    Mさんの家は大のネコ好きです。昨年も仔ネコを拾い、現在6匹飼育中です。6月に嫁いだ娘さんが、この夏に実家に遊びに来ました。トキソプラズマのことは以前より気になっていたので、ネコの健康診断に来院しました。身体検査は異常なく終えました。実家にはネコがたくさんいるということから、嫁ぎ先の義理の母がトキソプラズマ症を痛く心配しているということです。6匹のトキソプラズマ抗体を調べたところ、1匹だけ陽性でした。出産情報誌などで知識を得ていた娘さんは陽性という結果に落ち込みました。陽性イコール奇形児という間違った認識を持っていました。生半可な知識であったため、妊娠中にトキソプラズマに初感染したときに問題があること、ブタの生肉も問題あること、ネコのトキソプラズマは治療可能であることなどを説明しました。
    まだ、妊娠前であった娘さんは産婦人科へ行き、トキソプラズマの検査を受けました。結果は陽性で、これから問題になることはないことがわかると笑顔が戻りました。


    [予防]
    ネコは家の中で飼い、トキソプラズマ症に感染している生肉や小動物を食べさせないようにしましょう。ゴキブリやハエはトキソプラズマを運んでくることがあるので気をつけて下さい。
    またネコの糞便に触らないようにしたり、口移しで餌を与えないようにします。
    トキソプラズマは動物病院で検査、治療できます。
    また、トキソプラズマは冷凍しても死にません。お肉(特に豚肉)は必ず加熱して食べましょう。
    ネコを飼っている家庭は妊娠前に産婦人科や内科でトキソプラズマ症の検査をしてもらうといいでしょう。既にトキソプラズマ症にかかったことがあるなら、妊娠中にトキソプラズマ症にかかっても問題はありません。かかったことがないのなら、妊娠中はトキソプラズマ症にかからないように注意が必要です。

    [治療]
    症状が出ていない人は治療する必要はありません。
    妊娠中にトキソプラズマ症に感染した場合でも、治療することで症状を最小限に抑えることができます。


    (1) リンパ節 : 免疫に関係する器官で、病原体が入ると腫れることがあります。あご・わき・内股などにあります
     

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