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    ペスト【 Plague 】

    キーワード プレリードック、ノミ、急死
    病原体 ペスト菌
    感染動物 プレリードック、ネズミ

    [動物の症状] リンパ節の腫脹(※1)、高熱、死

    [ヒトの症状] リンパ節の腫脹、高熱、死

    [感染経路] ペスト菌保有ノミの刺咬、患者からの飛沫

    [敵を知る]
    ペストは黒死病(※2)ともいわれ、中世ヨーロッパで猛威をふるいヨーロッパの全人口の1/3〜1/2の命を奪った死の病として知られています。当時は衛生状況が悪く、ネズミに寄生しているノミがペスト菌を媒介していました。近年、先進国では衛生状況の改善で、発生数は減少し、日本では1926年を最後に、現在までペスト患者の発生はありません。
    しかし、世界的にみると、アフリカ、南北アメリカ、アジアでは発生し続けています。
    その結果、ペスト患者の発生数は1991年を境に増加傾向に転じ、1992年〜1996年の5年間のペスト発生件数は過去5年間の発生件数の倍近くにも相当するようになりました。
    特にアフリカ南東部(マダガスカル、タンザニアなど)の密林地帯では全世界の発生件数の85%を占めています。
    このようにペスト菌は元来、森林原野に生息する齧歯類、特にネズミ科やリス科の動物にかかる病気で、ノミを介して齧歯類間(ノミ⇔ネズミ)で常に流行を繰り返していますが、人が開発などで流行地に立ち入ることで感染環(※3)(ヒト⇔ノミ⇔ネズミ)に加わります。
    また、北アメリカでは野生のプレリードッグに感染環がある事が知られています。
    そこでCDC(※4)は北アメリカ内の輸出予定のペット用プレリードッグがペストに感染して多量に死んだことから、その危険性を察知し、プレリードッグの輸出入および販売を禁止するようにすべての州に勧奨しています。
    そして、日本においてもアメリカ産プレリードッグが年間数万頭輸入されていることから、厚生労働省は直ちに研究班を作り、実態調査(※5)を行いました。幸いにして、結果は全て感染していないことがわかりました。今後とも輸入感染症(※6)として注意を怠らないようにする必要があります。

    [病原体データ]
    ノミに吸血されると非常に強い痒みが残ります。これはノミが皮膚を刺した時に、吸血するために血が固まらないように、唾液を刺し口に散らすからです。この痒みは体の防衛反応の一つです。ノミ症は強いかゆみの一つとして昔から知られています、"掻痒感"という医学用語は非常に痒いことを指しますが、手偏"?"に"蚤(ノミ)"という字が使われていること見ると理解できるでしょう。
    ノミは蚊と違ってオス・メス共に吸血を行います(蚊はメスのみ吸血)。メスは1日数十個の卵を産み、死ぬまでに数百個の卵を産むといわれています。1日の採血量は、0.14mmlといわれ、1000匹感染していたら1日あたり0.14mlの血液を失うことになります。30日で4.2ml失い、体の弱い100g程度の仔猫が感染すると貧血で命を落とすこともあります。 卵は幼虫、サナギを経て、約1ヶ月で成虫になります。周りに動物がいないような条件や湿度が50%以下だとサナギのまま待機して、1年近く過ごすことが出来ます。サナギは湿度が50%以上ある環境下で動物の気配を感じると、すぐに脱皮して、成虫になります。 成虫のノミは14日から60日近く生き続けますが、低温で高湿度の環境では食べなくても1年近く生き続けることが出来ると報告もあります。
    「のみの夫婦」とよく言われるとおり、ノミはオスよりメスの方が大きいです。
    ネコにはネコノミが、イヌにはイヌノミ、ヒトにはヒトのみが吸血しますが、ネコノミはヒトにもイヌにも、通りがかりのどんな動物の血も吸います。動物を飼っていてヒトを刺すのは、ほとんどネコのみです、ある大学の調査ではイヌについているノミの75%もネコのみでした。
    ノミは昆虫ですので、気温が高い春から夏、秋が活動期間です。しかし、冬もしっかり暖房が効いた日本の住宅環境では、一年中棲息していても、不思議ではありません。

    [症例]
    1996年8月、コロラド州に住む16歳の少女が左腕に痛みを訴え、やがて痛みは腋下に広がり、感覚がマヒしました。地方病院で診察を受けましたが、症状はひどくなり入院しました。入院後に容体が急変し死亡しました。死亡後、CDC4)でペストと最終確定しました。患者が住んでいる近くで、多数のプレリードッグが死亡し、この少女が飼っていたイヌ5匹のうち4匹とネコ3匹のうち1匹が、ペスト菌に感染していました。
    1999年9月にもアメリカ中西部の輸出用の野生のプレリードッグがペストで大量死したと報道されています。

    [治療]
    感染初期に効果的な抗生物質で治療可能


    (1) 腫脹:腫れること
    (2) 黒死病:ペストに感染すると皮膚が黒く変色することから恐れられた。北里柴三郎が1894年に香港でペスト菌を発見した
    (3) 感染環:感染源と感受性個体が行き来している状態
    (4) CDC:米国厚生省疾病管理・予防センターで感染症の総本山
    (5) 実態調査:単発の検査で現在は検疫対象動物として扱われていないので検査は行われていない
    (6) 輸入感染症:海外旅行などで感染したり、海外の食品や輸入品などから国内に持ち込まれ国内で発生すること
      



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